施政方針

施政方針

平成31年度 施政方針

1.はじめに

 議長さんのお許しを頂きましたので、平成31年度当初予算の提案にあたり、町政運営の基本方針とその概要を申し上げます。
 時が過ぎるのは早いもので、町民の皆様から町長の職を負託していただき、既に6年目を迎えました。
 この間、議会を始め、町民や企業、職員の皆様方のお力添え頂いたことに厚く御礼を申し上げます。
 さて、まもなく、平成の時代に別れを告げることとなります。
 我が国においては、バブル崩壊やアジア通貨危機、リーマンショックと呼ばれるサブプライム危機、そして現在の米中経済対立など、概ね10年毎に大きな経済変動に見舞われています。
 本町においても、平成の最初の10年は主に、文化・体育施設の整備、次の10年は、住民と行政の協働のまちづくり、直近の10年は、自治活動の構築に加え、教育・保育施設の更新や土地利用の見直し、生活基盤整備など、諸先輩方がその時々に応じて、懸案事項の解決や住民満足度の向上に尽力された足跡を見て取ることができます。
 そして現在、我が国を取り巻く経済環境や安全保障は不安定さを増しており、本町においても、少子高齢社会における様々な課題が顕在化してきているところであります。
 こうした中で迎えた、平成31年度の予算編成は、引き続き増加傾向にある社会保障、福祉関連事業費の確保と、将来のまちづくりの礎となる、道路や橋りょう等の生活基盤整備事業を止めることなく推進するために、厳しい財政状況ではありますが、基金や起債を最大限活用し、予算措置したところでございます。
 平成31年10月には、消費税率が8%から10%へ引き上げ、法人町民税率は、9.7%から6%へ引き下げられる予定でございます。本町にとってはますます厳しい行財政運営を強いられることになります。
 平成31年度におきましても、議会を始めとする、職員、町民の皆様方と、このまちの将来像とその実現のための施策をその羅針盤として記している「第7次総合計画及びまち・ひと・しごと創生総合戦略」を共有し、常にその考え方を念頭において、町政運営に臨んでまいります。

2.行政運営方針

 続きまして、行政運営方針であります。
 本町は、地方分権時代を迎えた当初から、自立と共助のまちづくりを掲げ、まちに関わる色々な方々が主体的に考え取り組む、地方自治の原点に立ったまちづくりを進めてまいりました。
 財政状況が厳しさを増す中にあって、常に施策の選択と集中を認識しながら対応することで、結果としては、幅広い施策の水準をほぼ落とすことなく、新たなニーズにも対応してきましたが、この先、町民法人税率の引き下げや、その先の、生産年齢人口の減少は避けることは難しいのが現状です。
 我々には、このまちの豊かな暮らしを、孫子の将来に受け渡すために努力する責務がございます。
 そのためには、背水の心構えで、何かと、何かを融合させて効率化を図るか、意義や必要性は認めつつも、限られた財源の中で、優先順位を付けて廃止する、そういった苦渋の決断が不可欠です。
これまで我々が経験した、高度経済成長と共に拡大してきた行政施策からの後退として捉えられ、理解得難いことであるとは思います。
 それでも、「大口町に住んで良かった。」「大口町のことを誇りに思う。」など、この先においても、町民の皆様方により幸せを感じていただくための取り組みという信念を持って、情報発信、対応策や決断を丁寧に説明し、ご理解やご尽力を賜わるよう、創意工夫を凝らしたいと考えているところであります。
 お陰様で本町には、他団体に先駆けた、公共施策を住民の皆様が担う姿が随所で見られ、徐々にではありますがその輪が拡がりつつあります。
 このまちには、地域自治組織の活動や安全安心のまちづくり、地域包括ケアシステムなど、時代の流れに先んじて行動する、住民の皆様方の想いとマンパワーがあり、今後も着実に歩みが重ねられていると確信しているところでございます。

3.当初予算案の概要

 それでは、平成31年度の当初予算案について申し述べさせていただきます。
 一般会計予算は94億円、8特別会計予算の合計は、46億7,778万1千円、総額140億7,778万1千円でございます。
 予算編成に当たっては、社会構造が右肩上がりの時代の思考からの脱却を目指して、各所管課に一般財源を枠配分し、所管課では、その範囲を目安に、経営計画書と予算要求書を作成し、財政担当において集約し調整してまいりました。
 また今回、経常経費を極度に抑制することなく、将来への投資を継続するための財源確保の手段として、基金の取り崩し約7億7千万円と借入を2億円予定しております。
 しかしながら、私が町長に就任させて頂いた時と31年度末の見込みを比較しますと、財政調整基金が、23億4千万円から24億4千万円、明日のまちづくり基金が、4億6千万円から5億6千万円、さらに地方債残高は、28億1千万円から25億9千万へとなり、いずれも改善されています。
 この5年間、施策の選択と集中に心がけ、皆様方のご協力、ご尽力の賜物の証と感謝申し上げるものであります。
 特に財政調整基金につきましては、この10年間、法人町民税10億円を基準として、その差額を繰入れ、積み立て、さらに、将来的に町税収入の増加が見込まれる事業に充ててまいりましたが、31年度については、緊急・臨時的な事業の財源としても繰入れています。
 町民の皆様方のより良い暮らしを実現するための判断であり、今後、町民法人税率の引き下げにより、歳入歳出で相殺すると、経常的に概ね2億円程度の財源を失うことになろうかと推測いたしております。
それでもやはり我々は、先人から受け継いだ、自主自立、健全財政の誇りを堅持するために、更なる検討と取り組みを重ねる覚悟をしております。
 精一杯、皆様からお預かりした税の有効活用を図ってまいりますので、ご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

4.施策体系とその概要

 次に、平成31年度の主な施策について、総合戦略に基づき、説明させていただきます。

(1)若い世代の定住・子育て支援
 少子高齢社会が緩やかに進む中、バランスある人口構成を維持させていくために、まずは町民の皆様に、大口町の魅力を知っていただく取り組みとして、シティプロモーション事業を推進しているところでございます。
 その具体策の一つとして、新年度より、親子の同居や近居、在勤者の移住定住、さらには空き家対策等の補助事業に取り組んでまいります。
 また保育園における、3歳未満児の入園希望者の急増につきましては、核家族化や保護者の働き方の変化等の影響が急激に現れてきているのではないかと推測いたしております。
 対応が後手に回り、皆様方にご心配とご迷惑をお掛けし誠に申し訳ありませんが、一日も早く解消できるよう、設計途中ではありますが、西保育園の増設工事費を概算で計上いたしております。
 この園舎につきましては、仮設ではなく将来にわたって利用し、園児が減少に転じたあかつきには、老朽化した園舎を取り壊しながら、西保育園の施設更新を図りたいと考えているところでございます。
 さらに、「大口町に住んでいて良かった。」と実感していただけるよう、引き続き、保育園、小中学校を始め、地域自治組織、おおぐち歴史ガイド等、様々な組織と協働し、郷土の偉人である堀尾吉晴公など、このまちの歴史、文化の学びの場を増やし、郷土愛を深め、「大口町民としての誇りの醸成」を図ります。
 なお、本町の児童生徒の学力水準を危惧する声を耳にしておりますので、その事実確認や10年を経過する大口中学校の教科センター方式の検証などを踏まえ、計画的な教育環境の整備や確かな学力と豊かな発想、感性を持った子どもたちを育む学校教育の推進、そして、サポートルームさくらによる学習支援や奨学金返還支援など、家庭環境に関わらず、子ども達が将来に夢を持って自らの人生に向き合っていけるような、確かな学びも支援いたします。
  
(2)健やかな暮らしづくり
 安心で幸せな健康長寿社会の実現には、お一人お一人の暮らしや価値観に沿った、多角的なアプローチによる、健康寿命の延伸が重要でございます。
 そしてそれらは、行政施策として実施するよりは、各々の方の自覚に基づく自主的な活動の方が、継続性が担保され、効果的ではないかと考えているところです。
 従って、そういった活動への職員の支援強化や、健康づくり、生きがいづくりなどの活動拠点となる、健康文化センターや学習等共同利用施設の改修、さらには、現有施設をより快適にご利用いただくモデルケースとして、余野学習等共同利用施設の階段に、椅子式の昇降機の設置に取り組んでまいります。
 また、住み慣れた地域や家庭で、安心して住み続けられる仕組みの一つである、「地域包括ケアシステム」の実現に向け、地域自治組織等にご協力を頂きながら勉強会に取り組んでいるところでございます。
 さらに、母子福祉施策や風しん、はしかなどの感染症予防事業、さらには、高齢者福祉事業等、この大口町の、 人と人が触れ合える、丁度良い規模であることを生かした、それぞれの状況にあった本当に必要なサービスも、地域の皆様と協働して提供できればと考えております。
 なお、懸案課題であった、障がい者の、地域生活支援拠点である、グループホームの建設が、ハートフルおおぐちさんの手によって、平成31年8月着工予定、翌4月に開設の運びとなりました。
 現在、国に働きかけ、事業財源の確保に取り組んでおりますが、補助金枠が少なく非常に厳しい状況であります。
 親御さんの悲願の事業であります。
 町としては、建設用地の無償貸与に加え、国庫補助金が獲得できなかった場合であってもその願いが叶うよう、当初予算においては、町負担分に加え国県補助金分も合わせて計上しております。
 精一杯、支援してまいりたいと考えておりますので、何卒ご理解を賜りますよう心からお願い申し上げます。
   

(3)活力ある産業づくり・安定した雇用の創出
 私は、町長選立候補に当たり、先人が培ってきた自立可能なこのまちを、将来の世代に引き継いでいくため、50年後のまちの礎となる、産業振興や生活基盤整備の必要性を掲げさせて頂きました。
 町長就任から5年が経過し、秩序ある土地利用を堅持する中で、積極的な企業誘致に取り組んでまいりました。
 おかげさまで、既に6社において操業が始まっており、建設工事中やその手続き中の事業所に加え、複数の案件で用地交渉を進めているところであります。それらの稼働が本格化するであろう、2020年度以降の、固定資産税の増収に、大きな期待を寄せるものであります。
 また道路網の整備は、将来展望を持って地道に継続して取り組めば、より良い暮らしの実現につながる、大きな可能性を秘めた「まちづくり」であります。
 昨年末には、国道41号線が一部6車線化され、外坪地内における平面交差点が供用開始され、昨日には、オークマさん東側の、中小口三丁目交差点まで通行帯が拡がりました。
 機会を得るごとに、本町の現状等を伝えてきており、その中で、国道41号の件も働きかけをしてきています。
 おかげさまで、31年度においても、20億円程が予算措置されたと聞いており、今後も順調に、北に向かって工事が進むことが見込めます。町としては、その効果をより高められるよう、車輌の大型化等で通行に支障が出ている柿野橋の、架け替え工事に着手いたします。
 さらに、町道内津々線やそこに交わる町道等の交通量が増え始めており、通過交通の流れもさらに変化することが予想をされております。
 引き続き、町道秋田21号線や豊田22号線の拡幅整備については、ガスや用水、電気といった事業者の整備計画と調整を図り効率的に進め、中小口19号線等へは、夜間であっても安心して暮らせるまちを目指し、防犯灯の設置にも取り組んでまいります。
 今後も、民間の取り組みだけでは成し得ない、まちの将来像を見据えた、工場の新増設や設備投資に対して支援するため、まちづくり部と商工振興策を所管する産業建設部との連携を強化いたしてまいります。
 なお、小規模・中小企業振興条例につきましては、平成31年度中の条例制定を目指して検討を重ねております。企業経営支援も積極的に推進するため、大口町商工会にもさらなるご尽力を賜るよう働きかけ、町内企業の流出防止や雇用の維持拡大に取り組んでまいります。

5.むすび

 現在、経済的にも結びつきの深い韓国でありますが、日本の統治下であった1919年3月1日、最大の独立運動が起きたとされており、ちょうど100年に当たることからさらなる関係悪化が懸念されています。
 中国においても内政は不安定さを増しているのではないかとの見解もあり、その他にも、米中・米朝、中東諸国、英国とEU等、世界のあちこちで国際情勢が不安定さを増しております。
 現代においては、様々な国が複雑に関与することで経済等が成り立っており、我々地方公共団体であっても、その影響を何らかの形で受けることは不可避であります。
 いつの時代にも、先行きが明確に見える場合は少なく、より困難な時ほど、打つ手立てが結果として如実に表れることを、私は経営者として経験してきています。
 敗戦という大きな失意の中で、我が国を復興へと導いた吉田茂首相は有名でありますが、その側近として、GHQから「従順ならざる唯一の日本人」と評され活躍した、白洲次郎を、皆さんもご存知だと思います。
 彼もまた今からちょうど100年前の1919年、イギリス・ケンブリッジに留学した、民間人であります。
 彼は留学によって、欧米人の思考や国力を学んだことから、資源が無い我が国が戦争へと進むことに真っ向から反対し、開戦後にはいずれ日本はアメリカに空爆され食糧難に陥るであろうと、その直後に自ら東京郊外へ土地を求め、農業を始めたということであります。
 その先見性は、留学における経験や得た知識の蓄積からの判断に裏付けされたもので、そういった能力を吉田首相に見い出され、彼は、我が国の将来のためという強い信念を持って、GHQと粘り強い交渉を重ね、その期待に応えたとされています。
 彼が残したとされている、いくつかの言葉を紹介します。
 ・西洋人と付き合い、交渉するには、原理原則、志を持ち、自分の言葉でそれを表現できなくてはいけない。
 ・イギリス人の気持ち良いことの一つは、誰にも公平な態度をとること。
 ・高い地位に就いた者には、果たすべき責任と義務がある。
 ・我々の時代に戦争で元も子も無くしたから、少しでも取り返して子どもや孫に引き継ぐ責任がある。
 ・正義感を振り回されるのは困ると良く言われるが、自分はそれを尊いものと確信しているので、僕はそれを死ぬまで捨てない。
 彼はどんな時にも、自分の評価や名声を求めることなく、国や周りの人々のためになりたいとう強い志と正義感をもって、ブレずに困難に立ち向かい、道筋が見えて来ると潔くその役目を辞すことを、何度も繰り返し、生涯を全うしたとされています。
 かなり長時間となり、恐縮ではありますが、もう一つだけ、彼の逸話を紹介させていただきます。
 それは、彼が開戦について激論を交わし、物別れに終わった軍関係者が、終戦間際に生活に困窮していると聞くや、その自宅玄関先に多くの野菜を置いて黙って帰ったというものであります。
 いくら考え方や結果が違っていても、人としての付き合いにそれを持ち込むことなく今を、将来を、共に生きて行こうという、強く素晴らしい哲学の持ち主であったということです。
 白洲次郎が国のことを考えたように、壇上でお話させていただく我々、そして判断をしていただく議員の皆さんが、それぞれがそれぞれの道の中で清く、将来を見据えた大口町をみなさんとともにこれからも考えてまいりたい。24,000人の小さな町かもしれませんが、大口町民のためにますます皆様のお力をお借りしながらよい知恵を皆様からいただきながら町政運営にも励んでまいりたいと考えております。
 高度経済成長によって、我が国において、古くから脈々と受け継がれてきた、礼儀、尊厳、敬意、感謝などが失われてきていると危惧されています。
 意図的に悪意ある情報を流して誰かをおとしめたり、誰かがひとたび何か社会的な問題を引き起こすと、皆で集中的に非難する、そういった世の中に、将来に明るさを見いだせるのでしょうか。
 恐らく白洲次郎の人生の中には、非難されるようなことがあるのでしょうが、聖人君子ではありません、誰しも同じであります。
 10の中の一つや二つの、数少ない事例を取り上げて、それがすべてかのように振舞うのではなく、皆の得手な部分を寄せ合い、不得手な部分は許容し合うキモチが大切ではないでしょうか。
 昨年も申し上げましたが、私は、個人の利害ではなく志を同じくするものが集い、仲間となって事に当たることでこそ、信頼関係が高まり、事を成しえるのだと確信をいたしております。
 人は、何らかの成果が見えて来なければ、理解や行動することは難しいからこそ、我々行政を預かるものは、まだ見ぬまちの将来の姿を、先見性を持って考え、それを皆さんに丁重に説明し、理解を得る努力を重ねなくてはならないのです。
 平成の時代を振り返れば、情報通信技術の飛躍的な革新により、我々の生活、製造業や事務処理など、世の中のあらゆる場面において、昭和の時代に想像できなかった変革を遂げています。
 この先においても、AIの普及により、自動運転技術の開発や業種の改廃、金融取引や商業の在り様等、さらなる変革が起きると予測されております。その実態を見て先見性を理解したり、想定もしなかった事象に遭遇することもあるでしょう。
 私は先人から受け継いだ、この暮らしやすいまちを、子や孫の時代に受け渡してゆきたいと、そう思う一心であります。
 そのためには、歴史や経験から学んだ知恵を、時代の変化に合わせてアレンジして、さらに、慣例や経験にとらわれず判断して結果や評価を恐れず行動できる、そんな人財が不可欠だと思っています。
 現在、副町長の不在が長引き、皆様方には大変、ご迷惑とご心配をおかけしているところですが、この間、幹部職員それぞれが自覚をもって職務を遂行してくれております。苦労を掛けている一方で、各々の成長を見て取ることも少なくありません。
 私が思い描く、職務を滞りなく進めるベストの体制ではありませんが、その次に思い描くベターな現体制で町政運営に臨み、円滑な業務遂行と、さらなる人財の発掘や育成につなげていきたいと考えているところです。
 副町長の不在が常態化することを是としてはおりませんが、議員、職員、まちの皆様方には今しばらくご猶予いただき、さらなるご理解とご支援をお願いするものであります。
 今後も、このまちに関わる、より多くの人財が得手な分野で活躍することで幸福感を得て、その活躍が結果として地域に貢献する、そしてさらに、その輪がどんどん波及して連鎖し拡がってゆく、まちの人々が、誇りを持てるまち、活力あるまちを目指してまいります。
 議員を始めとする町民の皆様のご理解とご支援を賜りますよう、重ねて心からお願い申し上げまして、平成31年度の施政方針とさせて頂きます。
 ご清聴ありがとうございました。

平成31年2月28日
大口町長 鈴木 雅博 
 

平成31年度施政方針(PDF 352KB)
更新日 2019年2月28日